「一人息子」 小津安二郎監督 (ネタバレ有り)
父は既に他界し母子二人の生活だった。息子が進学か就職かの岐路で息子本人は進学を望むが家にそれだけの余裕はない。母親も進学断念を望むが、彼は学校で級長(ルーム長)もやって勉強がトップでもあり、担任先生のすすめもあって、母親は進学させることを決意した。
先生は進学を勧める言葉の中に「これからの時代、学問ができないと明るい未来もない」とのことだった。母親は「息子一人くらい進学させる力がなくてどうする!」との強い決心で息子の将来と自分のこれからの人生を決意した。
母親は生活の全てを子供の学業のために尽くし通した。
数年後、息子が東京で就職したと聞き及んで、母親は初めて息子に会いに行く。
息子は夜学の講師をしていた。かつての進学を勧めた先生も東京で「カツ屋」の店主をしていた。二人とも偉くなるというよりも東京で生活するのがやっとだった。
母親はこれが子供に学業を付けたいと尽し通した結果だと知って情けなく思った。息子自身もこんな姿を母親見られて残念であった。彼は既に結婚をしていて赤ちゃんもできたばかりだった。「これがお母さんの孫です」お互いに微笑んだが、現実生活は苦しかった。
ある日近所の子供が馬に蹴られて大けがをした。主人公の彼は急いで病院に担ぎ込んだ。一命は取り留め数日後退院という怪我であった。みんな安堵した、彼は隣人の母親に治療代だと言ってお金を渡した。
その金は東京へ出て来た母親を楽しませるために嫁が着物を売ってこしらえたお金だった。
母親は今日一日の息子の行動を見て感動した。隣人を助けたという事実を見て。
就職は上出来とは言えないが、息子の心根の優しさを見て涙ぐんだ。自分も貧乏をしたからそんなとき人に優しくされると本当に嬉しいものだと言った。これで田舎に帰りお父さんに報告できると言った。
母親が田舎に帰った後、息子は考えた。自分は弱音ばかり吐いていた、心を入れ替え、中等教員の免許を取るべくがんばろうと妻の前で意志を固める。
以上が小津安二郎監督が映画に盛り込んだ私達へのメッセージです。
私は人の心の優しさと、未来に向ける明るい心が人類をよりよくすると感じました。